秋は深煎りに変える|季節で豆を選ぶという考え方とおすすめ3選

秋のテーブルに置かれた深煎りコーヒーと落ち葉 コーヒー

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朝の空気がひんやりしてきた頃、いつもと同じ豆を、いつもと同じ手順で淹れたのに、どこか物足りないと感じたことはないでしょうか。自分にも毎年この時期に同じことが起こります。味が落ちたわけでも、淹れ方を間違えたわけでもない。ただ、季節がひとつ進んだだけなのです。

夏のあいだ心地よかった軽やかな一杯が、気温が下がった途端に手応えのないものに感じられる。そんなときに試してほしいのが、豆そのものを季節で替えてしまうという考え方です。具体的には、秋の入り口で焙煎度をひとつ深いほうへ寄せてみる。それだけで、同じ道具のまま驚くほど印象が変わります。

この記事では、焙煎度で味と香りがどう変わるのかを整理したうえで、寒い時期に深煎りが心地よく感じられる理由、秋向けの淹れ方の目安、そしてミルクと合わせる楽しみ方までをまとめます。あわせて、10月1日が「コーヒーの日」とされていることにも触れておきます。

焙煎度による味と淹れ方の違いを比べた図
焙煎度が変われば、合う湯温も挽き目も変わります

焙煎度で何が変わるのか

同じ産地、同じ品種の豆でも、どこまで火を入れるかで出てくる一杯はまるで違うものになります。焙煎が進むほど、豆に含まれる酸の一部は減っていき、加熱によって生まれる香ばしさや苦味の成分が増えていくとされています。つまり焙煎度は、味の設計図そのものを書き換える工程だと考えてよさそうです。

細かい呼び分けはお店によって差がありますが、大づかみには浅煎り、中煎り、深煎りの三つで十分です。自分の感覚では、次のように整理しておくと豆を選ぶときに迷いません。

焙煎度味の印象香りの方向酸味と苦味の比重合わせやすい飲み方
浅煎り明るく軽やか。後味がすっと引く柑橘や花を思わせる華やかさ酸味が前に出て、苦味は控えめそのまま、または冷やして
中煎り甘さと酸味の釣り合いがとれる木の実や焼き菓子のような穏やかさ酸味と苦味がほぼ半々そのまま。季節を問わず使いやすい
深煎り香ばしく、ほろ苦い。口当たりが重め焦がした砂糖やカカオを思わせる苦味が主役で、酸味は奥に隠れる濃く淹れる、ミルクと合わせる

表にすると当たり前のように見えますが、実際に飲み比べてみると、この差は想像よりずっと大きいものです。もし違いを言葉にできるようになりたいのであれば、同じ日に浅煎りと深煎りを並べて淹れ、香り、口に入れた瞬間、飲み込んだあとの三段階に分けて感想を書き留めてみてください。湯温や挽き目といった条件をそろえておくと、焙煎度そのものの差が見えやすくなります。

なぜ寒くなると深煎りが心地よく感じるのか

香りは温度に支えられている

コーヒーの香りは、湯気と一緒に立ちのぼる揮発性の成分によって感じられるものです。一般に、こうした成分は温度が高いほど立ちやすいと言われます。そして室温が低い季節は、カップに注いだ一杯の温度が下がる速さも夏とは比べものになりません。

ここで差が出ます。浅煎りの繊細で華やかな香りは、温度が下がると輪郭がぼやけて感じられやすい。一方で深煎りの香ばしさは、少し冷めても骨格が残りやすいとされています。寒い部屋で飲み切るまでのあいだ、最後の一口まで満足感が続くのは深煎りのほうだ、というのが自分の実感です。もちろんこれは感じ方の話で、誰にでも同じように当てはまると断言はできません。

苦味と香ばしさは「温かさ」の記憶と結びつきやすい

焼いたパン、香ばしいお茶、煮詰めた甘いもの。寒い時期に恋しくなるものを並べてみると、どれも火を通した香りを持っています。深煎りのコーヒーも同じ系統にあります。なぜそう感じるのかを科学的に言い切ることは自分にはできませんが、季節と味の好みが連動していることは、毎年繰り返し起きる事実として受け止めています。

秋の食べ物との釣り合いがとれる

もうひとつ現実的な理由があります。秋は甘いものが濃くなる季節だということです。栗、さつまいも、バターをたっぷり使った焼き菓子。こうした甘さに浅煎りを合わせると、コーヒーのほうが押し負けて水のように感じられてしまうことがあります。深煎りのほろ苦さと重みは、この手の甘さと正面から釣り合ってくれます。

秋の深煎りを、おいしく淹れるためのコツ

豆を深煎りに替えたのに苦いばかりでおいしくない、という失敗はよく起こります。原因の多くは、浅煎りや中煎りと同じ条件のまま淹れてしまうことにあります。深煎りには深煎り用の設定が必要です。ここでは自分がいつも動かしている三つの項目を挙げます。

湯温はやや下げる

いちばん効くのが湯温です。深く焙煎された豆は組織がもろくなり、成分が出やすい状態になっているとされています。そこに熱い湯を当てると、苦味や渋みが必要以上に引き出されてしまいます。

  • 浅煎りの目安:92〜96度
  • 中煎りの目安:88〜92度
  • 深煎りの目安:82〜86度

温度計がない場合は、沸かしたあと注ぎ口の広い容器に一度移し、1分から2分ほど置くだけでも十分に下がります。湯温と抽出時間の組み合わせについてはハンドドリップの湯温と時間で数字を細かくまとめているので、迷ったらそちらを目安にしてください。

挽き目はひと段階粗く

湯温を下げたうえで、挽き目も少し粗くします。中細挽きで飲んでいた人なら、中挽きへ寄せる程度です。粉が細かいほど湯が触れる面積が増え、苦味の出方が強くなります。深煎りはもともと苦味が主役なので、ここを抑えておくと香ばしさのほうが前に出てきます。粗さの段階を手元で確認したいときはコーヒーの挽き目ガイドが役に立ちます。

少量を濃く淹れる

秋以降、自分はカップを一段小さくします。たっぷり飲むより、少ない量をしっかり濃く淹れたほうが満足感が続くからです。目安としては次のような比率です。

  1. 豆15グラムに対して湯180ミリリットル。ふだん通りの濃さで、深煎りの香ばしさを確かめたいとき。
  2. 豆16グラムに対して湯150ミリリットル。しっかり濃く、そのまま少しずつ飲みたいとき。
  3. 豆18グラムに対して湯140ミリリットル。あとで牛乳を足す前提の、濃い下地をつくるとき。

注ぎ方は、最初に粉全体が湿る程度の湯を落として30秒ほど置き、そのあと二回から三回に分けて注ぎ切ります。深煎りは最初の蒸らしで勢いよく膨らみますが、慌てずに待つほうが味が落ち着きます。

買う量は少なめに

深煎りの豆は表面に油分がにじみ出やすく、その分だけ風味が落ちるのも早いと言われます。自分は200グラム単位ではなく100グラム単位で買い、2週間を目安に使い切るようにしています。保存の考え方はコーヒー豆の鮮度管理にまとめてあります。

ミルクと合わせる楽しみ方

深煎りが本当に力を発揮するのは、牛乳と合わせたときだと思っています。浅煎りの繊細な酸味は牛乳に埋もれてしまいがちですが、深煎りの香ばしさは牛乳の甘さを通り抜けて残ります。むしろ牛乳が入ることで、苦味の角がとれて飲みやすくなります。

自宅でつくるなら、濃く淹れたコーヒー80ミリリットルに、温めた牛乳80ミリリットルを合わせるところから始めてみてください。半分ずつという分かりやすい比率ですが、これがいちばん失敗しません。物足りなければコーヒーを増やし、苦ければ牛乳を増やす、という調整で自分の好みに近づけていけます。

  • 牛乳は60度から65度あたりまで温めるのが目安です。沸騰させると甘い香りが飛び、独特のにおいが出やすくなります。
  • 砂糖を入れるなら、きび砂糖や黒糖のようにこうばしさのあるものが深煎りとよく合います。
  • 牛乳が重く感じる日は、半分をお湯に替えると軽くなります。
  • 器を先に温めておくと、冷めるまでの時間がのびて最後までおいしく飲めます。

なお、同じ牛乳入りでも呼び名によって中身は違います。ドリップしたコーヒーに牛乳を合わせるものと、濃く抽出したものに牛乳を合わせるものは、そもそも成り立ちが別です。この違いが気になった方はカフェオレとカフェラテの違いを読んでみてください。家で再現しやすいのは前者のほうです。

10月1日は「コーヒーの日」

ちょうど秋の豆に切り替える時期に、ひとつ節目があります。国際コーヒー機関が定めた「国際コーヒーの日」が10月1日で、日本でも同じ日が「コーヒーの日」とされています。細かい由来については複数の説明を見かけたので、ここでは踏み込まずにおきます。

覚えやすい日付なので、自分はこの日を「豆を入れ替える日」として使っています。夏に飲んでいた浅煎りを片づけて、深煎りを一袋買ってくる。それだけで、季節の変わり目をきちんと通過した気分になれます。この時期はお店でも秋向けの豆が並びやすいので、店員の方に「寒くなってきたので深めのものを」と伝えてみると、思いがけない一袋に出会えることがあります。

秋に試したい深煎りの豆3選

少量から試せるものを選びました(価格は執筆時点の目安です)。深煎りは鮮度の影響を受けやすいので、まずは小さい袋からが確実です。

① 自家焙煎の深煎りブレンド|150gから試す

イタリアンローストとフレンチローストを扱う自家焙煎店の1袋。150gで約15杯分なので、深煎りが自分に合うかを確かめるのにちょうどいい量です。豆のままと粉から選べます。

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② マンデリン|深煎りの定番を産地で選ぶ

インドネシアのマンデリンは、深煎りにしたときのこくと香ばしさで知られる産地です。「深煎りらしい深煎り」を味わいたいときの定番。ミルクと合わせても負けません。産地ごとの個性はテイスティングの練習と一緒に試すと違いが掴めます。

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③ 選べるブレンド|好みを探しながら

5種類から選べるブレンドで、200gと1kgが用意されています。気に入ったものが見つかったら、まとめ買いに切り替えるという使い方ができます。毎日飲む方はこちらが経済的です。

選べるオリジナルブレンドコーヒー豆(楽天)

よくある質問

深煎りは苦いばかりで飲みにくいのですが、どうすればいいですか

まず湯温を下げてみてください。85度前後まで落とすだけで、苦味の出方はかなり変わります。それでも強いと感じる場合は、挽き目をひと段階粗くする、抽出時間を短く切り上げる、という順で調整します。三つ試しても苦さが気になるなら、牛乳を合わせる前提に切り替えるのが手っ取り早い解決策です。

秋になったら浅煎りは飲まないほうがいいのでしょうか

そんなことはありません。季節で替えるというのはあくまで選び方の目安で、規則ではありません。実際、よく晴れた秋の午前に浅煎りを飲むと、空気の透明さと合ってとても気持ちがいいものです。おすすめしたいのは、深煎りを主役に据えたうえで、浅煎りを少量だけ手元に残しておく形です。気分に合わせて選べる状態そのものが、いちばん贅沢だと思います。

深煎りの豆は、どれくらいの期間で使い切ればいいですか

自分は開封から2週間を目安にしています。深煎りは油分が表面に出やすく、風味の変化が早いとされているためです。粉の状態で買った場合はさらに早く、できれば1週間以内に飲み切りたいところです。買う量を100グラム程度に抑えておけば、この期間はそれほど無理なく守れます。

まとめ

気温が下がったら焙煎度をひとつ深いほうへ。やることはそれだけですが、道具を買い替えるよりもはるかに大きな変化が起こります。あわせて湯温を82度から86度あたりに下げ、挽き目をひと段階粗くし、量を少し減らして濃く淹れる。この三点を動かせば、深煎りは苦いだけの飲み物ではなくなります。

そして寒い日には、濃く淹れたところに温めた牛乳を半分。秋の焼き菓子を一つ添えれば、それでもう十分な時間になります。季節に合わせて豆を選ぶという発想は、コーヒーを飲む楽しみを一年かけて何度も更新してくれる考え方だと思っています。

今日の一杯が、いまよりちょっと豊かになりますように。

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