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「日本ワインの産地」と聞いて、山梨、長野、北海道あたりを思い浮かべる方は多いと思います。そこにもうひとつ、覚えておいてほしい名前があります。山形県上山市(かみのやまし)です。
蔵王連峰の麓に広がる果樹の町で、100年以上前からワインを造り続けている老舗もあれば、近年生まれた若い造り手もいる。しかも2,000円前後で驚くほど個性的な1本に出会える——コスパの面でも見逃せない産地です。
この記事では、かみのやまがワインの町になった理由、代表的な3つのワイナリー、そして今すぐ試せるおすすめの5本をご紹介します。
なぜ、かみのやまなのか
上山市は蔵王連峰の裾野に位置し、古くから果樹栽培が盛んな土地です。ぶどう農家の栽培技術が長い年月をかけて磨かれ、そこに個性的なワイナリーが加わったことで、独自のワイン文化が育ってきました。
もうひとつ大きいのがデラウェアの存在です。山形は日本を代表するデラウェアの産地で、種なしぶどうとして食卓に並ぶあの品種が、ここでは本格的なワインに姿を変えます。「デラウェアのワイン?」と侮ってはいけません。しっかり栽培・醸造されたデラウェアには、華やかな香りと奥行きがあると言われています。
そして、かみのやまは温泉町でもあります。ワイナリーを巡って、温泉に浸かって、山形の食を味わう。産地としての魅力に、旅先としての楽しさが重なっているのがこの町の強みです。
かみのやまを代表する3つのワイナリー
タケダワイナリー|100年を超える老舗
かみのやまを語るうえで欠かせないのがタケダワイナリー。創業は1920年、100年を超える歴史を持つ老舗です。掲げてきたモットーは「良いワインは良い葡萄から」。土づくりから始めるぶどう栽培にこだわり続けてきました。
約15ヘクタールの自家農園では、低農薬・化学肥料不使用の栽培を実践。そして特筆すべきは、栽培・醸造の責任者である岸平典子さんの存在です。業界で先駆けとなった女性の醸造・栽培責任者として、野生酵母での発酵など、意欲的な取り組みを続けてきた造り手です。
ウッディファーム&ワイナリー|蔵王山麓のテロワール
1997年創業。蔵王山麓のテロワールに恵まれたぶどう栽培の適地で、「地味豊かなワインづくり」を掲げるワイナリーです。シャルドネなどヨーロッパ系品種にも力を入れており、かみのやまの土地の力を素直に感じられる1本を造っています。
ベルウッドヴィンヤード|新しい世代の造り手
2017年創業と、この3つのなかではもっとも新しいワイナリー。造り手の鈴木智晃さんは、山形の「朝日町ワイン」で醸造責任者を務めた経験を持つ方です。老舗が土台を築いたかみのやまに、新しい感性が加わっている——その象徴のような存在です。
歴史ある造り手と新しい造り手が同じ町で切磋琢磨している。これが今のかみのやまの面白さです。
かみのやまワインおすすめ5選
ここからは実際に手に入る5本を、目的別にご紹介します(価格は執筆時点の目安です)。
| 銘柄 | タイプ | 目安価格 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| タケダワイナリー サン・スフル | 微発泡・白 | 約2,420円 | まずはこれ。にごりの泡 |
| タケダワイナリー ブラン | 白・辛口 | 約1,980円 | 老舗の実力を手頃に |
| タケダワイナリー ルージュ | 赤・ライト | 約1,980円 | 軽やかで和食に合う |
| ウッディファーム シャルドネ | 白・辛口 | 約2,750円 | 蔵王山麓のテロワール |
| ベルウッド ベーリーA ルージュ | 赤 | 約2,420円 | 新世代の造り手の味 |
① タケダワイナリー サン・スフル|まず飲むならこれ
かみのやまワインの代名詞ともいえる1本。山形県産の完熟デラウェア100%を使い、発酵途中のワインをそのまま瓶詰めして、瓶の中で発酵を続けさせるという造り方(アンセストラル法)で仕上げた微発泡ワインです。
酵母が生んだ炭酸ガスがそのまま溶け込み、無濾過なのでぶどう由来のにごりと澱が残ります。この濁りこそが風味の源。透明で整ったワインとは対極にある、生き生きとした味わいです。「日本ワインって面白い」と思わせてくれる1本を探しているなら、まずこれをおすすめします。

② タケダワイナリー ブラン|老舗の実力を2,000円以下で
100年の蓄積を持つワイナリーの白を、2,000円を切る価格で試せる1本。すっきりとした辛口で、和食にも洋食にも寄り添います。「まずは普通の白から」という方は、こちらから入るのも良い選択です。

③ タケダワイナリー ルージュ|軽やかな赤
同じくタケダワイナリーの赤。ライトボディで渋みが穏やかなので、和食にも合わせやすい1本です。日本ワインの赤は「軽やかで食事に寄り添う」タイプが多く、これはその良い例。少し冷やして12〜14℃くらいで飲むのがおすすめです(温度の考え方はこちら)。

④ ウッディファーム シャルドネ|蔵王山麓の白
蔵王山麓のテロワールを味わうならこの1本。世界的な白ぶどうであるシャルドネが、かみのやまの土地でどんな顔を見せるのか——産地ごとの違いを楽しむ飲み方が好きな方には、特に面白い体験になるはずです。

⑤ ベルウッド ベーリーA ルージュ|新世代の1本
マスカット・ベーリーAは日本を代表する黒ぶどう品種。新しい造り手が、この日本固有の品種にどう向き合っているかを味わえる1本です。老舗のタケダと飲み比べると、同じ町でも造り手によって表情がまったく違うことがよく分かります。

合わせたい料理
- サン・スフル(微発泡)×前菜・揚げ物──にごりの微発泡は、天ぷらや唐揚げの油をきれいに流してくれます
- 白×山形の食材──だし、山菜、芋煮(塩・醤油系)。同じ土地のもの同士はやはり相性が良いです
- ベーリーA(赤)×和食──すき焼き、照り焼き、味噌を使った料理。醤油やみりんの甘みと自然に響き合います
よくある質問
Q1. デラウェアのワインって甘いのですか?
いいえ、辛口に造られるものが多くあります。食用のデラウェアの印象から甘口を想像されがちですが、しっかり醸造されたものは華やかな香りと奥行きのある味わいになると言われています。サン・スフルはその代表例です。
Q2. にごりや澱があっても大丈夫ですか?
問題ありません。無濾過のワインでは、ぶどう由来のにごりや澱が残るのが自然な姿で、それが風味の一部になっています。気になる場合は、抜栓前に立てて冷やしておくと澱が落ち着きます。開けるときはガスで吹きこぼれることがあるので、よく冷やしてゆっくり開栓してください。
Q3. 現地のワイナリーは訪ねられますか?
かみのやまでは、ワイナリーを巡るイベントが開催されることもあり、温泉とあわせて楽しめる産地です。ただし各ワイナリーの見学・試飲の対応はそれぞれ異なりますので、訪問前に必ず公式サイトや観光案内で最新情報をご確認ください。
まとめ|温泉町がつくる、滋味あふれるワイン
蔵王の裾野に広がる果樹の町で、100年の老舗と新しい造り手が同じ土地に立っている——それが山形・かみのやまのワインです。しかも多くが2,000円台。日本ワインの入り口としても、次の1本としても、これほど魅力的な産地はなかなかありません。
迷ったら、まずはサン・スフルから。にごった微発泡をグラスに注いだ瞬間、日本ワインの見方が少し変わるはずです。
ほかの日本ワイン産地に興味がわいたら、北海道・余市のワインもあわせてどうぞ。今日の一杯が、いまよりちょっと豊かになりますように。

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