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安いワインを買ったけれど、ひと口飲んで「これは失敗したな」と思ったことはありませんか。渋みが角ばっていて、香りも単調。そのまま残して、キッチンの隅で数日が過ぎる——よくある話です。
そのワインを、温めて、はちみつとスパイスを足すだけで、まったく別の飲み物に変えられます。ホットワイン(ヴァン・ショー)です。
面白いのは、高いワインではむしろもったいないという点です。繊細な香りは加熱で失われてしまうので、この飲み方は1,000円台のワインでいい。むしろそのほうが向いています。作り方の要点はたった2つ、温度とスパイスの量だけです。
ヴァン・ショーとは|ヨーロッパの冬の定番
フランス語で「ヴァン(ワイン)」「ショー(熱い)」。そのままの意味です。ドイツ語圏では「グリューワイン」と呼ばれ、冬のクリスマス市では紙コップに注がれたものを、手を温めながら飲む光景が定番になっています。
もともとは余ったワインや質の落ちたワインを美味しく飲むための知恵だったとも言われます。温めて甘みと香りを足せば、粗さが目立たなくなる。実に合理的な発想です。

基本の作り方|材料と手順
まずは基本形です。赤ワイン500mlぶん、2〜3杯分の分量です。
| 材料 | 分量の目安 | 役割 |
|---|---|---|
| 赤ワイン | 500ml | 土台。1,000円台で十分 |
| はちみつ(または砂糖) | 大さじ2〜3 | 甘みと、とろみ |
| シナモンスティック | 1本(半分に折る) | 甘い香りの主役 |
| クローブ | 2〜3個 | 芯を通す強い香り |
| スターアニス(八角) | 1〜2個 | 中華風の甘い香り。好みで |
| 生姜スライス | 2枚 | 後味を引き締める |
| オレンジ・レモン | 各1〜2枚 | 酸味と華やかさ |
手順は3ステップだけ
- 鍋に全部入れる──ワイン、はちみつ、スパイス、果物を鍋へ。順番は気にしなくて大丈夫です
- 弱火で温める──ここが最大の勘所。70〜80度をキープし、沸騰させません。鍋の縁に小さな泡が出はじめたら火を弱めます
- 5〜10分おいて、こす──スパイスの香りが移ったら、茶こしなどでこしてカップへ
電子レンジでも作れます。耐熱カップにワインとはちみつ、スパイスを入れて600Wで1分半ほど。様子を見ながら加減してください。鍋を出すのが面倒な夜は、こちらで十分です。
失敗する原因は、だいたい2つ
① 煮立たせてしまう
いちばん多い失敗です。沸騰させるとアルコールが飛び、香りも一緒に逃げます。残るのは、酸っぱくて薄い液体だけ。
目安は70〜80度。湯気は立つけれど、ぐらぐらしない状態です。温度計がなければ、鍋の縁に細かい泡が出てきたところで火を弱めると覚えてください。
逆に、アルコールを弱めたい場合は意図的に長く加熱します。通常5〜10分のところを20分ほど煮ると、度数は下がるとされています。お酒が苦手な方や、翌朝に残したくない夜はこの方法もあります。
② スパイスを入れすぎる
もうひとつの失敗が、クローブやシナモンの入れすぎです。香りが強いぶん、量が多いと苦味が前に出て、薬のような味になります。
クローブは2〜3個で十分。「少ないかな」と思うくらいがちょうどいい、と考えてください。足りなければ次回増やせばいいだけです。引き算のほうが安全です。
どんなワインを選べばいいか
結論から言うと、1,000円台の赤で十分です。理由は3つあります。
- 繊細な香りは加熱で失われる──高いワインの魅力である複雑な香りは、温めると飛んでしまいます。つまり価格の差が味に出ません
- 渋みは甘みが隠してくれる──安いワインで気になる角のある渋みは、はちみつとスパイスで気にならなくなります
- たっぷり使える──ホットワインは1杯あたりの量が多くなりがちです。気兼ねなく注げる価格帯が現実的です
タイプで言えば、渋みが穏やかで果実味のある赤が向きます。重すぎるものより、中庸なものが扱いやすい印象です。白ワインでも作れますが、まずは赤から試すのがおすすめです。
そして、この飲み方の副次的な利点として、開けてから数日たったワインの出口になることが挙げられます。飲みきれずに困っている1本があるなら、まさにこの使い道です(保存の考え方は開けたワインはいつまで飲める?にまとめています)。
揃えておきたい材料4つ
一度買えば冬のあいだ何度も使えるものばかりです(価格は執筆時点の目安です)。
① シナモンスティック|まず買うならこれ
ホットワインの香りの主役です。粉ではなくスティック(原形)を選んでください。粉だと濁って舌触りが悪くなりますが、スティックなら香りだけがきれいに移ります。チャイやクラフトコーラにも使えるので、余っても困りません。

② クローブ|香りの芯をつくる
シナモンだけだと、どこか物足りない。その隙間を埋めるのがクローブです。2〜3個で驚くほど香ります。入れすぎ注意という意味では、いちばん気をつけたいスパイスでもあります。

③ スターアニス(八角)|好みが分かれる1つ
星形の見た目も楽しいスパイス。甘く独特の香りで、好き嫌いがはっきり分かれます。まず1個から試して、気に入ったら増やすのが安全です。見た目が華やかなので、人に出すときにも向いています。

④ はちみつ|砂糖よりまろやかに
砂糖でも作れますが、はちみつのほうがとろみと丸みが出ます。ウイスキーのホットトディにも使えるので、秋冬の温かいお酒を楽しむなら1本あると便利です。

よくある質問
Q1. スパイスがなくても作れますか?
作れます。ワイン+はちみつ+オレンジ1切れだけでも十分に美味しくなります。スパイスは「あるとより良くなる」もので、必須ではありません。まずは家にあるもので試して、気に入ったら買い足すのがいいと思います。
Q2. 白ワインやロゼでも作れますか?
作れます。白で作ると軽やかで、レモンや生姜との相性が良くなります。ただし赤のほうがスパイスに負けないぶん、失敗しにくい印象です。慣れてきたら白も試してみてください。
Q3. 余ったら保存できますか?
スパイスをこしてから冷蔵で1〜2日が目安です。ただし温め直すたびに香りは落ちていくので、その日のうちに飲みきる量を作るほうが満足度は高くなります。2〜3杯分から始めるのがちょうどいい分量です。
まとめ|1,000円のワインが、冬の定番になる
覚えることは2つだけです。①沸騰させない(70〜80度) ②スパイスは控えめに。この2点さえ守れば、失敗しようがありません。
高いワインを買う必要もなく、むしろ安いほうが向いている。飲みきれなかった1本の使い道にもなる。手間のわりに、返ってくるものが大きい飲み方だと思います。
寒くなってきた日の夜に、鍋ひとつで部屋じゅうが甘い香りになります。お酒は適量で、ゆっくりと。今夜の一杯が、いまよりちょっと豊かになりますように。

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