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スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズ。「5大ウイスキー」をひと通り知ると、次に気になってくるのが「新しい産地」です。
その代表として名前が挙がるのが、台湾のウイスキー「カバラン」です。2015年には、世界的なウイスキーの品評会で「世界最高のシングルモルト」に選ばれました。
この記事では、カバランが生まれた物語と、暑い国でウイスキーの熟成が早く進むとされる理由、そして楽天で買える最初の1本の選び方をまとめます。5大産地の基本ははじめてのスコッチウイスキーから読むと、違いがよりはっきり見えてきます。
台湾にも、世界で評価されるウイスキーがある
2015年、世界のウイスキーを審査する品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」で、カバランの「ソリスト ヴィーニョバリック」が世界最高のシングルモルトに選ばれました。
その後も受賞は続いています。2023年には、国際的な品評会「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ」で、その年に最も優れたウイスキーの造り手に贈られる賞を4年連続で受賞しました。2026年6月の発表では、国際的な品評会で獲得した金メダルが通算1,000個に達したとされています。
蒸溜所が最初のお酒を造ったのは2006年です。ウイスキー造りを始めてから10年足らずで、世界一の評価を受けたことになります。
カバランの物語|飲料会社の創業者の夢から始まった
缶コーヒーで知られる「金車」が造った蒸溜所
カバランを造っているのは、台湾の飲料会社金車(キングカー)グループです。缶コーヒーの「ミスター・ブラウン」で知られる会社で、コーヒーとウイスキーの両方を手がけています。
創業者の李添財氏にとって、ウイスキー造りは長年の夢だったと紹介されています。ところが台湾では、お酒の製造を国が独占する制度があり、民間の会社はウイスキーを造れませんでした。
流れが変わったのは2002年です。台湾が世界貿易機関に加盟したことで、民間の会社がウイスキーの蒸溜所をつくれるようになりました。カバランは、台湾で初めての民間のウイスキー蒸溜所とされています。
9か月で建てた蒸溜所と、2006年3月11日の最初の1滴
建設が始まったのは2005年のはじめ。蒸溜所はわずか9か月ほどで完成したと紹介されています。味づくりには、世界的に知られるウイスキーの専門家、ジム・スワン博士が協力しました。
蒸溜器には、スコットランドのフォーサイス社が造った銅製のポットスチルが使われています。そして2006年3月11日、最初のニューメイク(樽に入れる前の、生まれたてのお酒)が流れ出しました。最初の商品「カバラン クラシック」が発売されたのは、2008年のことです。
スコットランドの技術を土台に、自分たちの土地の気候で味を磨いていく。この歩みは、日本のウイスキーの成り立ちとも重なります。日本の物語はジャパニーズウイスキー入門で紹介しています。
「カバラン」は宜蘭の古い呼び名
蒸溜所があるのは、台湾の北東部にある宜蘭(ぎらん)県の員山郷です。背後に3,000m級の雪山山脈がそびえ、太平洋からの海風が吹き込む土地です。
「カバラン」は宜蘭の古い呼び名で、この地に暮らしてきた先住民族の名前でもあります。仕込みに使うのは、雪山山脈から流れてくる澄んだ水です。
暑い国でなぜ早く熟成するのか|3つの理由
カバランを語るうえで欠かせないのが、熟成の早さです。スコットランドのような涼しい土地では、ウイスキーは長い年月をかけてゆっくり熟成します。一方の宜蘭は、暑さと湿気が強い亜熱帯の土地です。この気候が、熟成の進み方を大きく変えるとされています。
① 暑さで、樽の成分がよく溶け出す
ウイスキーの琥珀色や香りの一部は、熟成のあいだに樽の木から移ってきます。カバランのマスターブレンダー、イアン・チャン氏は、熟成が早い大きな理由として台湾の暑さを挙げています。暑さによって木の成分がよく引き出され、短い期間で濃い色と木の香りが得られるという説明です。
② 「天使の分け前」がとても多い
樽の中のウイスキーは、熟成のあいだに少しずつ蒸発して減っていきます。これを「天使の分け前」と呼びます。スコットランドでは、年に1〜2%ほどと言われます。
カバランの5階建ての熟成庫では、最上階が42℃近くになることもあり、天使の分け前は年15%を下らないと紹介されています。毎年15%ずつ減るとすると、5年で半分以下になる計算です。長く寝かせるほど、樽に残るお酒は大きく減っていきます。
③ 熟成庫は「自然まかせ」
カバランの熟成庫では、空調などによる温度の調整はしていません。窓や扉を開けて風を通すだけで、宜蘭の暑さと湿気、海と山から吹く風をそのまま樽に受けさせています。台湾は地震が多いため、樽を縄でしっかり固定しているのも特徴です。
どれくらい早く熟成するかは資料によって幅がありますが、スコットランドの3〜4倍の速さとする紹介もあります。カバラン自身も、こうした熟成を「熟成の再定義」という言葉で表しています。

樽で選ぶカバラン|代表的な4つの樽
カバランの定番品の多くは、ラベルに熟成年数を書いていません。そのかわりに手がかりになるのが「どの樽で熟成させたか」です。バーボン、シェリー、ワインなど、別のお酒を寝かせていた樽を使い分けているのがカバランの特徴です。
- バーボン樽──アメリカのバーボンを寝かせた、アメリカンオークの樽。バニラの香りと、やわらかな木のスパイス感が出やすいとされます
- シェリー樽──スペインの酒精強化ワイン「シェリー」を寝かせた樽。カバランではオロロソというタイプの樽が使われ、いちじくやドライフルーツのような濃い香りが特徴です
- ワイン樽──赤ワインや白ワインを寝かせたアメリカンオークの樽。内側を削り、焼き、焦がし直すジム・スワン博士考案の手法で、ワインの風味を複雑な果実の香りに変え、バニラの甘さも引き出すと説明されています
- ポートワイン樽──ポルトガルの甘口ワイン「ポートワイン」を寝かせた樽。ブルーベリーやプラムのような果実の香りが加わります
同じ蒸溜所の原酒でも、樽が変わると香りの方向がはっきり変わります。熟成年数ではなく、樽の種類で選ぶのが、カバランを楽しむ近道です。
楽天で買える、はじめてのカバラン4本
どれも700mlのボトルで、楽天で在庫を確認できたものを選びました(価格は2026年10月23日時点の税込の目安です)。
| 銘柄 | 主な樽 | 味の傾向 | 価格帯 | こんな人に向いている |
|---|---|---|---|---|
| ディスティラリーセレクト No.1(40度) | 厳選した樽の原酒を合わせたもの | トフィー・バニラ。軽くやわらか | 約5,280円 | まずは手頃に試したい人・ハイボールで飲みたい人 |
| クラシック(40度) | 主に再使用の樽とバーボン樽、少しのシェリー樽 | はちみつ・マンゴー・洋なし・バニラ | 約9,480円 | カバランの原点の味を知りたい人 |
| コンサートマスター ポートフィニッシュ(40度) | アメリカンオーク樽のあと、ポートワイン樽で仕上げ | ブルーベリー・はちみつ。コクのある甘さ | 約8,060円 | 甘めの味が好きな人・食後にデザートと楽しみたい人 |
| ソリスト ヴィーニョバリック(約57度) | ワイン樽(ひとつの樽から瓶詰め) | メロン・キャラメル・ビターチョコ。力強い | 約19,550円 | 特別な日に、世界が認めた味を確かめたい人 |
① カバラン ディスティラリーセレクト No.1|手頃に始める入口の1本
2018年に「ディスティラリーセレクト」として登場した、入門向けの1本です。厳選した樽の原酒を合わせ、トフィーやバニラの甘い香りと、やわらかでなめらかな口当たりに仕上げられています。度数は40度です。
販売店でも、飲みやすく気軽に楽しめる1本として紹介されています。カバランが自分の好みに合うか、まず手頃な価格で確かめたい方に向いています。ストレートのほか、ハイボールで食事と合わせる楽しみ方もあります。

② カバラン クラシック|2008年に生まれた、カバランの原点
蒸溜所が最初に発売したシングルモルトです。主に再使用の樽とバーボン樽、少しのシェリー樽で熟成させた原酒を合わせています。はちみつ、マンゴー、洋なし、バニラ、ココナッツを思わせる香りと、後味にほのかに残るオレンジのような香りが特徴とされます。度数は40度です。
販売店の説明では、ウイスキー1に対して水5の水割りや、魚介料理との組み合わせもすすめられています。カバランらしい果実の香りを、まずは素直に知りたい方に向いています。

③ カバラン コンサートマスター ポートフィニッシュ|ポートワイン樽の甘い余韻
アメリカンオークの樽で熟成させたあと、ポルトガルのポートワイン樽(ルビー、トウニー、ヴィンテージの3タイプ)で1年かけて仕上げた1本です。ブルーベリーやはちみつ、マシュマロのような甘い香りがあり、コクと甘みのある口当たりと紹介されています。度数は40度です。
2009年に発売された、クラシックに次いで古い銘柄の1つです。販売店の説明ではデザートとの相性のよさが挙げられていて、食後にチョコレートや焼き菓子と合わせたい方に向いています。

④ カバラン ソリスト ヴィーニョバリック|2015年「世界最高のシングルモルト」
2015年のワールド・ウイスキー・アワードで、世界最高のシングルモルトに選ばれた銘柄です。「ソリスト」は、ひとつの樽から瓶詰めするシリーズで、水で薄めずに樽出しに近い度数(カスクストレングス)のまま詰められています。このボトルは約57度で、輸入の時期によって度数が変わります。
メロンやキャラメルの香りにワイン由来の風味が重なり、アーモンドやビターチョコレートのような余韻が続くとされます。価格は上がりますが、世界最高の評価を受けた味を、特別な日に確かめたい方に向いています。度数が高いので、少量をストレートで味わい、水を数滴ずつ足して香りの変化を楽しむのがおすすめです。

カバランのおいしい飲み方|3つの楽しみ方
ストレート|まずはひと口、南国の果実の香りを確かめる
カバランの持ち味は、パイナップルやマンゴーを思わせる南国の果実の香りだと言われます。まずは常温のまま少量をグラスに注ぎ、香りをゆっくり確かめてみてください。
加水|数滴の水で香りを開かせる
度数の高いソリストは、水を数滴ずつ加えると香りが開きやすいと言われます。ウイスキーと水を1対1で割る「トワイスアップ」も、香りを楽しむ飲み方として知られています。
ハイボール|手頃な1本で、食事と合わせる
ディスティラリーセレクト No.1やクラシックは、炭酸水で割ってハイボールにし、食事と合わせるのも1つの楽しみ方です。ストレート・ロック・ハイボールそれぞれのコツはウイスキーの飲み方入門にまとめています。
よくある質問
Q1. 熟成年数が書かれていないのは、若いお酒だからですか?
カバランの定番品の多くは、ラベルに熟成年数を書いていません。宜蘭の暑い気候では熟成が早く進むとされるため、スコットランドの年数の感覚とそのまま比べることはできません。年数よりも、樽の種類と味の傾向で選ぶのがおすすめです。
Q2. ソリストのような度数の高いウイスキーは、強すぎませんか?
ソリスト ヴィーニョバリックは約57度と高いので、量を多く飲むお酒ではありません。グラスに少量を注ぎ、水を数滴ずつ加えながら好みの濃さを探すと飲みやすくなります。不安な方は、40度のクラシックやディスティラリーセレクト No.1から始めてください。
Q3. 好みに合わなかったときは、どう飲めばいいですか?
ストレートで強く感じたら、氷を入れたロックや、炭酸水で割るハイボールに変えてみてください。合わせるおつまみを変えるのも1つの方法です。開けたあとは栓をしっかり閉め、直射日光の当たらない涼しい場所に置けば、少しずつ飲み進められます。
まとめ|まず1本なら「カバラン クラシック」
台湾・宜蘭の暑さと湿気は、ウイスキーの熟成を早める一方で、天使の分け前を大きくします。カバランは、①樽の成分がよく溶け出す ②天使の分け前が多い ③熟成庫は自然まかせという環境を味方につけて、短い期間で世界に認められました。
まず1本なら、蒸溜所が最初に世に出したカバラン クラシックがおすすめです。カバランらしい果実の香りを、40度の飲みやすさで確かめられます。手頃に試すならディスティラリーセレクト No.1、特別な日にはソリスト ヴィーニョバリックを選んでみてください。
5大産地をひと通り知ったあとに味わう、南の島の1杯。グラスの向こうに、雪山山脈と太平洋にはさまれた宜蘭の暑い夏を思い浮かべてみてください。お酒は適量で。今夜の1杯が、いまよりちょっと豊かな時間になりますように。

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