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秋になると、栗やさつまいも、かぼちゃ、りんごを使ったお菓子がお店に並び始めます。洋菓子店やコンビニで季節限定の品を見かけると、つい手に取りたくなる方も多いのではないでしょうか。
そんな秋のお菓子に合わせるコーヒー、いつも同じ豆を選んでいませんか。コーヒーとお菓子の組み合わせは「ペアリング」と呼ばれ、合わせ方しだいでお互いの味わいが引き立つと言われています。
本記事で私が提案したいのは、「お菓子を先に決めて、それに合わせて豆を選ぶ」という発想です。コーヒーの味は、焙煎度(豆をどのくらい深く焼いたか)や産地によって大きく変わるとされています。お菓子の甘さや香ばしさ、酸味に合わせて豆を選ぶと、いつものおやつの時間が少し特別なものになるかもしれません。
前半では合わせ方の基本となる考え方を整理し、後半ではモンブラン、焼き芋・スイートポテト、かぼちゃプリン、アップルパイ、チョコレート、和菓子の6つについて、合わせやすい豆の例を紹介します。最後に早見表と淹れ方のひと工夫もまとめていますので、お菓子と豆選びの参考にしてください。
合わせ方の基本となる4つの考え方
コーヒーとお菓子の組み合わせ方には、大きく分けて2つの方向があると言われています。1つは、似た風味どうしを重ねて、香りや味を引き立てる方法です。もう1つは、反対の性質を持つものを合わせて、お互いの強さを和らげ、全体のバランスを取る方法です。
この2つの方向をもとに、秋のお菓子に使いやすい考え方を4つに整理しました。
| 考え方 | なぜ合うとされるか | お菓子の例 |
|---|---|---|
| 甘さが強いものには、苦味とこくのある深煎り | 苦味が甘さを引き締め、口の中が重くなりすぎないとされます(反対の性質を合わせる) | 焼き芋、かぼちゃプリン、羊羹 |
| 果物を使ったものには、酸味のある浅煎り | 果物の甘酸っぱさと、コーヒーの果実のような酸味が重なるとされます(似た風味を重ねる) | アップルパイ、果物のタルト |
| 香ばしいものには、香ばしさのある中煎り〜中深煎り | 焼いた香りや木の実のような風味どうしが重なりやすいとされます(似た風味を重ねる) | モンブラン、どら焼き、焼き菓子 |
| 重さ(こく・口当たり)をそろえる | 軽いお菓子には軽めのコーヒー、濃厚なお菓子にはしっかりしたコーヒーを合わせると、どちらかが負けにくいとされます | 栗きんとん(軽め)、ガトーショコラ(濃厚) |
どれか1つを守れば正解、というものではありません。「このお菓子は甘さが主役なのか、果物が主役なのか、香ばしさが主役なのか」を考えるための目安として使うと便利です。
焙煎度に加えて、産地も豆を選ぶときの手がかりになります。産地ごとの風味は、よく次のように説明されます。
- エチオピアやケニアなどアフリカの豆:花や果物のような香りと、明るい酸味を持つものが多いとされます。
- ブラジルやグアテマラなど中南米の豆:ナッツやチョコレートのような香ばしさと甘さを感じやすいと言われます。
- インドネシア(マンデリンなど)アジアの豆:土や草を思わせる独特の香りと、どっしりとしたこくがあると表現されることが多い豆です。
もちろん同じ産地でも、農園や加工の方法、焙煎度によって味わいは変わります。あくまで「傾向」として捉え、実際に買うときは袋に書かれた風味の説明もあわせて確認するのがおすすめです。秋に深煎りを楽しむ理由や選び方については、秋に深煎りコーヒーを楽しむ記事でも紹介しています。

秋のお菓子ごとの合わせ方
ここからは、秋のお菓子を6つ取り上げ、合わせやすい焙煎度と産地の例を紹介します。どれも「よく言われる組み合わせ」をもとにした提案ですので、好みに合わせて調整してください。
モンブラン(栗)には中煎り〜中深煎り
モンブランは、栗のペーストのほっくりとした甘さと香ばしさに、生クリームのこくが加わったお菓子です。栗は香ばしさとまったりとした舌触りが特徴で、中煎りのコーヒーと相性が良いとされています。
合わせる豆としては、ナッツのような風味があると言われるブラジルやグアテマラの中煎り〜中深煎りが候補になります。栗の香ばしさとコーヒーの香ばしさが重なり、全体がまとまりやすくなると考えられます。
いっぽう、洋酒がしっかり効いたものや、甘さの強いマロンクリームをたっぷり使ったものは、深煎りを合わせると甘さが引き締まって感じられるかもしれません。和栗を使った甘さ控えめのモンブランなら、栗の繊細な風味を隠さないよう、中煎りくらいにとどめておくと合わせやすいでしょう。
焼き芋・スイートポテトには中深煎り〜深煎り
焼き芋は、ねっとりとした蜜のような甘さと、皮の近くの焼けた香りが魅力です。「甘さが強い」「香ばしい」という2つの特徴を持っているため、苦味とこくのある中深煎り〜深煎りが合わせやすいと考えられます。
産地の例としては、香ばしさのあるブラジルの深煎りや、どっしりとしたこくがあると言われるインドネシアのマンデリンの深煎りなどが挙げられます。深煎りの苦味には、甘いお菓子の後味を引き締める役割があるとされています。焼き芋の素朴な甘さが続いたあとに深煎りをひと口飲むと、口の中がすっきりと切り替わる感覚を楽しめるかもしれません。
スイートポテトは、さつまいもにバターや卵黄、砂糖を加えて焼くため、焼き芋よりもこくが強くなります。深煎りをそのまま合わせるほか、ミルクを加えたカフェオレにするのも選択肢です。ミルク入りのコーヒーは、クリームやバターを使ったお菓子と相性が良いと言われています。
かぼちゃプリンには深煎り
かぼちゃプリンは、かぼちゃのほっくりとした甘さに、卵と牛乳のこく、カラメルのほろ苦さが重なったお菓子です。カラメルを使ったプリンのような甘いお菓子には、苦味のある深煎りがよく合うとされています。
深煎りの苦味がカラメルのほろ苦さとつながり、かぼちゃの甘さが引き立つと考えられます。豆はコロンビアやブラジルの深煎り、または深煎りのブレンドなど、苦味とこくのバランスが取れたものが選びやすいでしょう。
また、プリンはミルク入りのコーヒーとも合わせやすいお菓子として紹介されることがあります。苦味が強すぎると感じる場合は、深煎りで淹れたコーヒーに温めた牛乳を加えてみてください。冷たいプリンと温かいコーヒーという温度の違いも、楽しみの1つになります。
アップルパイには浅煎り
アップルパイは、甘酸っぱく煮たりんごと、バターを使ったサクサクのパイ生地が特徴です。果物を使ったお菓子には酸味のある浅煎りが合うとされ、アップルパイはその代表例としてよく挙げられます。
豆は、果物のような香りがあると言われるエチオピアやケニアの浅煎りが候補です。りんごの酸味とコーヒーの酸味が重なることで、果物らしさがより感じられると考えられます。また、明るい酸味には、バターを使った生地の重さをすっきりさせる働きがあるとも言われています。
シナモンがしっかり効いたものや、カスタードが入った甘めのアップルパイなら、中煎りを選ぶと酸味と苦味のバランスが取りやすくなります。浅煎りの酸味が苦手な方も、中煎りから試してみると取り入れやすいでしょう。
チョコレートには深煎り(果物入りなら浅煎りも)
秋から冬にかけては、濃厚なチョコレート菓子が恋しくなる方も多いのではないでしょうか。チョコレートと深煎りは定番の組み合わせとされており、甘いミルクチョコレートは、苦味の強い深煎りと合わせることでお互いの味が調和すると言われています。
ガトーショコラやカカオ分の多いチョコレートのような重めのお菓子にも、濃い苦味を持つ深煎りが合うとされています。産地では、チョコレートのような風味があると言われるブラジルやグアテマラの中深煎り〜深煎りが選びやすいでしょう。
ベリーやオレンジなどの果物を合わせたチョコレートの場合は、エチオピアなどの浅煎りを選び、果物の酸味と香りを重ねる楽しみ方もあります。同じチョコレートでも、何と組み合わされているかによって豆を変えてみるのがおすすめです。
和菓子(栗きんとん・羊羹・どら焼き)
和菓子とコーヒーは意外な組み合わせに思えるかもしれませんが、相性が良いとする紹介は多く見られます。理由の1つとして、和菓子は洋菓子に比べてバターや生クリームなどの脂肪分が少なく、コーヒーの味を邪魔しにくいことが挙げられています。
栗きんとん(栗と砂糖を炊いて茶巾の形に絞った和菓子)は、栗そのものの素朴な甘さが主役です。風味が繊細なので、苦味の強い深煎りよりも、中煎りくらいのやさしい豆のほうが合わせやすいと考えられます。ブラジルやコロンビアの中煎りなどが候補です。
羊羹は、和菓子の中でも甘さがはっきりとしたお菓子です。甘さの強い羊羹には、しっかりとした苦味と香りを持つ深煎りがおすすめ、とする紹介が見られます。そのいっぽうで、上品な甘さの羊羹は浅煎りと調和するという見方もあります。羊羹の甘さの強さや好みに合わせて、選び分けてみてください。
どら焼きは、はちみつや卵を使った香ばしい生地と、あんこを組み合わせたお菓子です。生地の焼けた香りに合わせるなら中深煎り、あんこの甘さを引き締めたいなら深煎りと、どちらを主役にするかで豆を選ぶ楽しみがあります。
早見表:秋のお菓子と合う焙煎度・産地
ここまでの内容を表にまとめました。豆を選ぶときの目安にしてください。
| お菓子 | 合う焙煎度 | 産地の例 | 理由 |
|---|---|---|---|
| モンブラン(栗) | 中煎り〜中深煎り | ブラジル、グアテマラ | 栗とコーヒーの香ばしさが重なるとされるため |
| 焼き芋 | 中深煎り〜深煎り | ブラジル、インドネシア(マンデリン) | 強い甘さを苦味が引き締め、焼けた香りどうしも合うと考えられるため |
| スイートポテト | 深煎り(カフェオレも可) | ブラジル、コロンビア | バターのこくには、しっかりした苦味やミルクがなじむとされるため |
| かぼちゃプリン | 深煎り | コロンビア、ブラジル、深煎りのブレンド | カラメルのほろ苦さと深煎りの苦味がつながると考えられるため |
| アップルパイ | 浅煎り(甘めなら中煎り) | エチオピア、ケニア | りんごの酸味とコーヒーの果実のような酸味が重なるとされるため |
| チョコレート | 深煎り(果物入りは浅煎り) | ブラジル、グアテマラ(果物入りはエチオピア) | 甘さと苦味が調和するとされるため |
| 栗きんとん | 中煎り | ブラジル、コロンビア | 栗の繊細な風味を隠さずに楽しめると考えられるため |
| 羊羹 | 深煎り(上品な甘さなら浅煎り) | インドネシア(マンデリン)、深煎りのブレンド | 強い甘さを苦味が受け止めるとされるため |
| どら焼き | 中深煎り〜深煎り | ブラジル、グアテマラ | 生地の香ばしさとあんこの甘さに合わせやすいと考えられるため |
この表は、あくまで出発点です。実際に2種類の豆を飲み比べて「どちらが好きか」を確かめると、自分なりの組み合わせが見つかりやすくなります。味の感じ方を言葉にするコツは、コーヒーのテイスティング入門で紹介しています。
お菓子と合わせるときの淹れ方のひと工夫
同じ豆でも、淹れ方を少し変えるだけでお菓子との相性が変わることがあります。ここでは、ハンドドリップで淹れる場合の目安を紹介します。
- 粉をふだんより1〜2g増やして少し濃いめに:お菓子の甘さに負けないよう、お湯150mlに対して粉10〜12gで淹れている場合は、12〜14g程度に増やしてみる方法があります。粉を増やしにくいときは、抽出量を130ml程度に減らしても濃さを出せます。
- 湯温は焙煎度に合わせる:深煎りは85度前後、浅煎りは90〜93度程度が、よく挙げられる目安です。深煎りを高すぎる温度で淹れると苦味が強く出やすいと言われるため、お菓子に合わせるときも温度を意識しておくと安心です。
- 飲む順番は「コーヒー、お菓子、コーヒー」:最初にコーヒーをひと口飲んで味を確かめてから、お菓子を食べ、もう1度コーヒーを飲むと、組み合わせによる味の変化に気づきやすくなります。
- 少し冷めたころの味も確かめる:淹れてから5〜10分ほどたって温度が下がってくると、酸味や甘みの感じ方が変わると言われます。熱いうちと少し冷めてからの両方で、お菓子との相性を比べてみるのもおすすめです。
- 冷たいお菓子には温かいコーヒーを:かぼちゃプリンのように冷やして食べるお菓子は、温かいコーヒーと合わせると、温度の違いも楽しめます。
湯温と抽出時間の関係については、ハンドドリップの湯温と時間の目安で詳しくまとめています。
秋のお菓子に合わせたい豆3種
早見表で多く登場した産地から、200g前後で試せるものを選びました(価格は執筆時点の目安です)。
① ブラジル|モンブラン・焼き芋・どら焼きに
深めに焙煎したブラジルです。ナッツやチョコレートのような香ばしさがあり、栗や焼き芋、どら焼きと合わせやすいタイプです。1種類だけ選ぶならこれ、という使いやすさがあります。約1,480円。

② エチオピア モカ|アップルパイに
果実のような香りで知られるエチオピアの中浅煎りです。りんごの甘酸っぱさと酸味が重なり、アップルパイや果物のタルトと合わせると、お互いの香りが引き立ちます。約1,580円。

③ マンデリン 深煎り|かぼちゃプリン・羊羹に
インドネシアのマンデリンは、深煎りにしたときのこくと苦味で知られます。カラメルのほろ苦さがあるかぼちゃプリンや、甘さのしっかりした羊羹を受け止めてくれます。約1,660円。

よくある質問
家にある豆が1種類だけでも楽しめますか?
楽しめます。豆が1種類しかない場合は、淹れ方で調整するのがおすすめです。甘さの強いお菓子に合わせるときは粉を少し増やして濃いめに、果物を使ったお菓子に合わせるときはいつも通りの濃さで淹れる、といった工夫で印象が変わります。これから豆を買う場合は、バランスの取れた味わいで、さまざまなお菓子に合わせやすいとされる中煎りを選ぶと使いやすいでしょう。
夜にお菓子とコーヒーを楽しみたいときは、どうすればよいですか?
カフェインが気になる方は、カフェインを取り除いたデカフェを選ぶ方法があります。デカフェにも焙煎度や産地の違いがあるため、本記事の考え方をそのまま使って、お菓子に合わせた豆選びができます。選び方はデカフェの選び方ガイドを参考にしてください。
ミルクや砂糖を入れても合わせられますか?
合わせられます。ミルク入りのコーヒーは、クリームやバターを使ったお菓子と相性が良いとされています。スイートポテトやかぼちゃプリンなどには、カフェオレも選択肢になります。いっぽう、お菓子そのものに甘さがあるため、まずは砂糖を入れずに試してみると、お菓子の甘さとコーヒーの苦味や酸味の違いを感じやすくなります。
まとめ
秋のお菓子とコーヒーを合わせるときは、「お菓子を先に決めて、それに合う豆を選ぶ」という発想を取り入れると、選び方の幅が広がります。基本の考え方は、次の4つです。
- 甘さが強いお菓子には、苦味とこくのある深煎り
- 果物を使ったお菓子には、酸味のある浅煎り
- 香ばしいお菓子には、香ばしさのある中煎り〜中深煎り
- 軽いお菓子には軽めの豆、濃厚なお菓子にはしっかりした豆
ただし、ここで紹介した組み合わせは、よく言われる考え方をもとにした目安です。最終的には、自分の舌で「おいしい」と感じる組み合わせがいちばんです。モンブランや焼き芋を手に取ったときは、ぜひ豆選びも楽しんでみてください。
今日の1杯が、いまよりちょっと豊かになりますように。


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